マーケティングオートメーションと組織名分析によるコンテンツマーケティング活動事例

 

マーケティングオートメーションにおける組織名分析機能は、もはやなくてはならないものになってきました。本記事では、その組織名分析をコンテンツマーケティングに活用した、ウェブプラ合同会社での事例を紹介します。

執筆:寺岡幸二/ウェブプラ合同会社代表
https://www.webpla.jp/
執筆書籍:マーケティングとキャリアデザイン マーケターの価値観とスキルを可視化する
https://www.amazon.co.jp/dp/4991209900?tag=booklogjp-author-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1

活動概要

ウェブプラ合同会社では、HR(Human Resource:人材、人的資源)業界を中心に長年マーケティング業務に携わってきた経験をもとに、マーケティングに関わる方のキャリアを支援する活動とともに、オープンソースアプリケーションを活用したウェブ運用の支援もおこなっております。

対象となるオープンソースアプリケーションには、コンテンツ管理システム(CMS)の他にマーケティングオートメーションシステム(MA)もあります。普及率が十数%程度とも言われるマーケティングオートメーションシステムに関しては、啓蒙活動もまだまだ必要です。そのため不定期ながら、オープンソースのMAツール「Mautic」をつうじた勉強会やワークショップなども開催してきました。

一般的な企業、特にBtoB企業におけるMA活用には、自社サイトにターゲット(見込み顧客)ニーズに応えるコンテンツを投稿し、資料ダウンロードなどのコンタクトを通じながら、リードナーチャリングしていくことが多いかと思います。またリードが属する組織の傾向を分析した上で、何らかの営業活動やマーケティング活動を促していくことも少なくありません。

そして当社のサイトにおいては、企業活動の側面よりも情報配信メディアとしての側面が強いことが特徴でもあります。社会人だけではなく学生の方にもマーケティング領域でのキャリア形成について考える場になることを意識しており、そのためのコンテンツマーケティングのあり方を模索しているところです。

コンテンツのあり方

この場合のリード獲得の手段としては、問い合わせよりも記事閲覧やダウンロードコンテンツを通じながら、イベント参加につなげていくアプローチが有効と考えています。そして参加者どうしのつながり1つ1つが、コミュニティを形成していくというシナリオです。

このシナリオ上に点在するキーワード群がSEO的なキーワードとなります。主には、「マーケティング(戦略・解析)」「テクノロジー(Martech)」「キャリア」というカテゴリーに集約されていきます。

これらのキーワードに対し、検索流入を目的としたコンテンツマーケティング戦略を策定します。具体的には、各キーワードがどれぐらいの月間検索ボリュームがあるかを踏まえながら、検索結果の1ページ目に上がってきた場合に想定される流入数やダウンロード率から、リードの獲得予測を立てていき、コンテンツの改善にあたります。

量的な側面においてはこのように対策できますが、収集できたリストからイベント参加を促す際は、リード属性の傾向把握や解析も必要となってきます。

具体的には、上図の青い部分、.bizや.co.jpなどのアドレスから、組織をある程度読み解くことは可能です。しかしながら赤い部分のような個人メールアドレスの場合、その方の属性を読み解くことは困難です。人物像が見えない中で、さまざまな分野のイベントの案内を無作為に送っても、配信停止とされる可能性は高くなります。

そのような背景から、どこどこJPによる組織名情報を活用しました。

MauticとどこどこJPの連携

どこどこJPの情報をMauticのフィールドに追加する方法を見てしましょう。

どこどこJPタグは省略していますが、それと併せてMauticのトラッキングコードに対し、上記のような情報を追加します。

  • companyname:会社名
  • companyzipcode:郵便番号
  • companynumber_of_employees:従業員数区分
  • companyannual_revenue:資本金規模
  • companyindustry:業種(業種業態コード)

挿入できる変数値やフィールド名は、どこどこJPサイトで公開されています。技術的なところは非常にシンプルに実装できます。このあたりはさまざまなトラッキングコードに情報を追加するパターンと技術的な対応は同じです。一点、業種業態コードは数字で定義されているので、その対応表はMautic側で定義しました。

変数名の方は、もともとMautic側で会社用情報として用意されているフィールド名です。ご自身で用意されたカスタムフィールドに対してどこどこJPの情報を入れるということも可能ですが、今回は元からあるフィールドを活用しています。

上図で会社名はマスキングしていますが、各会社に対してコンタクト件数が数件見られ、複数のリードが記録されてるのがわかります。Cookieベースでユーザー判定されているので、基本的には1つの会社から複数のアクセスがあっても、全て別のリードとして管理されます。そこからダウンロードコンテンツを通じてメールアドレスを入力してもらえれば、unknownではないリードとして活用できるようになります。

組織名の活用

unknownのリードであっても、組織名を付与するすることで各コンテンツの閲覧傾向に違いがあることが分かりました。

各コンテンツのアクセス数やダウンロード数だけを見ていると、ページビュー数やセッション数の話になってしまいます。しかしここで企業・学校・その他での分類で見た場合、閲覧と実際にダウンロードまでつながる傾向には違いがあるのが分かります。

マーケティングコンテンツは、当初は具体的にどのように実務に生かしていくかを検討する社会人をイメージしていました。しかしそれよりは、マーケティングのフレームワークがダウンロードできることにメリットを感じる学生のダウンロード率が増える傾向にあり、ここで得たリードに関しては学生向けのイベントリストへの活用へとシフトしていきます。

逆にテクノロジーコンテンツは学生はダウンロードまで到達せず、社会人技術者向けとなります。そのための資料ダウンロードを含むコンテンツ改善をしていくというような結果となりました。

キャリア系に関してはちょっとまだまだ活用しきれておらず、改善と呼べる状況まで行っていませんが、今後改善ができればと思っているところです。

このような形で、組織名分析を行うことでターゲット像を明確にし、各コンテンツの改善をおこなったという事例になります。


補足ですが、MA活用におけるカスタマージャーニーマップの有効性には、賛否があるのが現状かと思われます。シナリオどおりに機能しない、どちらかと言えばユーザーの行動をリアルタイムに把握し何らかアクションを起こすトリガーとしての機能が有効だったりします。しかし今回の取り組みにおいては、コンテンツへの接触からイベント参加までのシナリオの精度をあげるコンテンツマーケティングができることを実感しました。

ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

執筆:寺岡幸二/ウェブプラ合同会社代表
https://www.webpla.jp/
執筆書籍:マーケティングとキャリアデザイン マーケターの価値観とスキルを可視化する
https://www.amazon.co.jp/dp/4991209900?tag=booklogjp-author-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1