動的IP継続性についての調査

昨今のIPアドレスの事情について、
IPアドレスが変化するまでの“保持日数”と“共有されているIP”の視点から調査しました。

1. IPアドレスの保持期間

下記条件において動的IPアドレスが継続的に利用される日数を調査しました。調査は以下条件で実施しています。
※本調査はGeolocationTechnologyの持つ様々なログに含まれるファーストパーティクッキー、およびスマホ広告に利用される端末の識別子等、端末側に保持されるデータをもとに集計を実施しています。
※前回調査の継続調査になります。
 前回調査:動的IPアドレスの保持期間調査 | IT情報メディア「LIVRA」 (geolocation.co.jp)

調査条件:

・調査期間は2022/2月~3月の2か月間
・1ユーザーごとに同一IPが継続している日数を集計
・IP継続日数が1日以上のIPを抽出(継続日数1日時点の累計数を基準値:100%とする)
・利用回線ごとに集計し、継続日数1日時点の累計数を基準とした継続率を算出
・ISDN,PIAF・PHS,他ナローバンドはデータ数が少ないため除外

調査結果:

Bフレッツ/CATV/フレッツ系(ftth/xDSL混在)については30日経過後においても80%以上のIPアドレスが継続利用されていますが、携帯電話では翌日には70%となり、30日後では11.6%の維持率でした。
本結果より回線維持のタイプは大きく2種類に分けられます。IPの継続率が低いグループは、[携帯回線、Wi-Fiルーター等の無線デバイス回線、ダイヤルアップ回線]が該当します。継続率が高いグループは主に光等の固定回線です。ユースケースからも想定できる通り、携帯回線の方が固定回線に対してIPアドレスが変わりやすいと考えられます。

2. IPアドレスの共有事情

IPアドレスは特定のユーザーに紐づくわけではなく、一定の利用後にIPが変わります。では一つのIPはどれくらいの人によって利用されるのでしょうか。IPoE 接続などによる IPv4アドレスは現在多くの利用者の間で共有されながら運用されています。特にスマートフォンなどの通信においては頻繁に共有されています。本調査ではどのくらいのIPが共有されているのかを調査いたしました。

1.にて求めたIPの継続率に対して、同期間内(2022/2月~3月)で複数のアカウントにて共有利用されたIPの割合を調査した結果を示します。1つのIPアドレスが1ユーザーのみの利用だった割合が全体の20%であり、残りの80%は同一期間内において複数のユーザーで利用されたIPアドレスの割合となります。結果大部分のIPが共有化されており、継続利用する中でもIPが切り替わりながらアクセスしていることわかります。携帯回線においてはその特徴が特に強いと考えられます。

3. まとめ

IPの継続性について、前回の調査と同様に固定回線、携帯回線で継続率の傾向が異なる結果が見られました。業界全体として大きな変化はないと考えられます。IPの共有化については、継続的にIPが利用されるが利用回線によってIPが共有化されている可能性があることが見えました。特に携帯回線からのアクセスと固定回線からのアクセスによって傾向が異なる可能性が高く、ユーザーエージェント情報等と掛け合わせて用いることで、より詳細分析に繋がる可能性があります。また、IPv4は共有化されておりますがIPv6は共有化されない傾向にあります。よってIPv6では共有化する必要性が少なく、IPv4とは異なる傾向を示す可能性があります。IP Geolocation 事業では、IPv6において同様の調査を進めていくと同時に、IPv4とIPv6とを掛け合わせた分析を用いてサービス品質の向上に取り組んでいいきます。